第1話 プロローグ
この物語は、自分が経験した釣りの世界を通して、
そこに関わる人間関係や出来事を物語風に辿ってみようと思います。
そして釣りから学んだこと、もちろん釣りの技やそれを習得するまでの苦労話しや面白い話などを
タイムマシンに乗って過去から振り返ってみようと思います。
釣りの話からいろいろ発展していくことや自分と関わった人達なんかが登場すると思います。
もちろん本名は、プライバシーを守るため公開はしませんが、
あれって思わせる場面も考えています。
最初に、この物語の題にある「水鞠物語」(みずまりものがたり)、水鞠って何かなって?思います。辞書なんかで調べると水玉の大きいサイズのことって出てきます。
自分と水鞠との出会いがこの物語のスタートになると思います。

「自然が造るアート」
1975年頃は、釣りを覚えていろいろな経験が増えてきた頃です。十勝のフリーストン系の流れにあこがれて通い始めた時期でした。もちろん大好きなニジマスの釣りです。
この時は、フライフィッシングに出会ってからすでに5年目の初夏だったと思います。
当時はドライフライの釣りに感動してました。6月の中頃、川の水もだいぶ落ち着いてきて、
フライフィッシングの最高の時期直前でした。まだ河川工事も無く自然のままの川です。
乗用車ぐらいの大岩がいくつも点在するポイントで出会いが始まります。
夕方のここは水生昆虫の羽化で魚達も狂喜乱舞の状態です。太陽が随分傾き、
丁度逆光の位置にいます。

ライズの中でも一際大きいのが光の中を通して見えます。完全に背びれや尾びれが見え盛り上がった筋肉質の背中までシルエットを確認することが出来ます。使用するフライは、わかっていてオオマダラカゲロウのイマ-ジャーを水面直下で捕食しているようだ。
口先が水面を割ってないのがその答えです。
浮くと釣れないし、沈みすぎても釣れない世界です。
キャスティングは、きっと一発のみ。その時点で掛けないと2回目は無いでしょう。
ライズのタイミングを測ります。日没までまだまだ時間はあります。水生昆虫の羽化だけが、
続いてくれれば大丈夫だと思います。
少し震える手で#12のフライをつまみ出します。
今回は、魚が大きいのでティペットは5xで行きます。
イマ-ジャーなのでフリーノットで結びます。
大岩の後ろ側は、8畳間ぐらいのフラットな流れになっていて本線と平行に流れています。
重なる部分は時計と逆周りの渦巻がいくつも見えます。

そこにフライが入ってしまうと直ぐにドラグがかかってしまう状態です。
ニンフなら使える流れですが、水面直下のイマ-ジャーの釣りでは、
厄介な流れになっています。狙っている魚は、その流れの直ぐ脇で捕食しています。
きっと流れが集まって餌が集中している所だと思います。
あと30センチ手前に来てくれたらと思いながら、
キャスティングチャンスをうかがっていました。
頭の中では、掛かってからの取り込みや魚のファイトを想定していました。
「捕らぬ狸の皮算用」にならないことも祈りつつその時をまっていました。
時間にしたら、たぶん15分ぐらいだと思いますが、とても長く感じる時でした。

ついにその時が来ました。魚の動きが少しずつ手前のフラットの流れ方に移動して来ます。
あと10数えたらキャスティングに入ると心を決めてグリップを一度強く握りしめました。
フォルスキャスティングは、三回以内で終わらせ、プレゼンテーション。
魚の2メートル上に落とし、フィーディングレーンを調整するのとフライの沈下状態を
修正するには、この長さは必要だと思います。
もちろんドラグフリーでドリフトさせないと、元も子もありません。
10を数えて、キャスティングを開始。
三回目目のフォルスキャスティングで予定通りのコースをドリフトしています。

「水鞠との出会い」
微妙なレーンの調整を入れながら、フリードラグでドリフトは、中々難しいことです。
フライも水面下数センチを保ちます。魚の背びれが見えて、
それが見えなくなった瞬間に合わせ入れるのが、セオリーになります。
ライズの付近までフライは行っているはず、水面が僅かに盛り上がり、
銀色の背びれが見えた!自分のフライでは無く、本物を捕食したかもしれません。
イマ-ジャーの釣りでは、ドライフライのように合わせを入れるステージもあります。
今回は、逆光でポラロイドサングラスでも確認が難しい時は、
魚の動きなどで合わせることもあります。
銀色の背びれが水面下に入りました。タイミングを取って短いストロークでロッドを立てる、
もしこの瞬間僅かに重みを感じたら、二度目の合わせを左手のラインを
引きながら更にロッドを立てます。
来た乗ったと直感的にわかりました。水面近くでヒットしてるので、ジャンプされることを認識して取り込みます。思った通り水柱の立つようなジャンプしました。
その時、尾びれで弾いた水しぶきが、ピンポン玊ぐらいに見えます。
スローモーションのように逆光に輝いて見えます。

「これが水鞠です」
この経験が釣りの世界により深く関わることになりました。
そして釣りから繋がる人間関係や考え方を自分の感じた物語として残してみたいと思います。


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